僕の仕事(写真)は長持ちしないと意味がないんですよ。
デジカメって現像もいらないし本当に便利ですけど、インクジェットでプリントするとやっぱり長持ちするっていうことでいうとね……。とにかく、今の時代でも一番長持ちするプリントは白黒写真なんです。色がなくて面白くないかもしれないけど、10回のうち1回でもいいからデジタルじゃなくてフィルムで、できたら白黒で撮ってほしいと思います。ほんとに、撮った本人が気づくのは自分が歳を取ってからなんですよ。写真が変色してしまって、白黒だけが綺麗に残ってて、「あらら〜、白黒撮っておいてよかった」ってなる。常連のお客さんは「旅行に行ったから」ってフィルムを出してくれたりするんですが、デジカメで撮る人は自分の家でプリントする。

でも、よく聞いてみると、実際はプリントをしない人が多いんですよね。そういう状態で置いておくと、本当にその存在自体を忘れちゃう。それは非常に危ういんです。今は気づかなくても、もっと歳をとって「記録」しておくことの大事さに気づいたときには取り返しがつかない。僕がこうして白黒写真の良さを発信してるのは、それで商売しようって気ではないんです。ただこうして写真の商売をやってて、当たり前のように気づくことだから、それを少しでも教えてあげたいって気持ち。発信しないといけないっていう思いがすごく心にあるんですよ。良心というのか義務というのか。今は例えば1人しか気づいてくれていなかったとしても、そういう人が来年には3人になり、5年後に1000人とかになればいいと思っているんです。やっぱりねえ、写真は自分の孫の代までは持たないとまずい。最低30年、できれば50年以上。

インクジェットはインクを混ぜてるので色んな色が出ますけど、色があせて完全にゼロになる可能性がある。でも銀塩っていうのは本当に銀ですから。銀の塊を砕いて乳剤の中にいれて。銀の画像なんですよね。だから白黒で将来黄色くなっても、銀の画像は残るので、ゼロにはならないんです。だから写真屋さん自体も、もし白黒のDPEが来たときはちょっと頑張って、意識してやってほしいと思うんですね。DPEの現像の工程のなかで水洗いっていうのがあるんですが、その時間も、30分とか言われていますけど決して15分で打ち切らないで35分やる気持ちでやって欲しい。とにかく僕はお店として発信し続けたい。責任がありますんで。

あとはですね、僕は営業写真館をやってるので思うんですけど、とにかくみなさんには自分の家族を撮っておいてほしいっていうのが僕の切なる希望です。まず人間から撮って欲しいっていうか。僕は結構、葬儀写真もやるんですけど、写真が趣味でたくさん写真撮ってる方でも、自分の親を撮ってないっていう人が多いんです。照れくさいっていうのがあるんですよ。でもね、こういう仕事をしていると、2週間程前に近所を歩いてた人の葬儀写真が突然来たりするんですよ。「ええっ!?」って。ある程度歳をとるとね、突然亡くなったりするんです。人間っていうのはすごく脆いっていうのが分かってるからね。だから時々でいいから、その気で、本人も自覚を持って遺影を撮っておいて欲しい。早く自覚すれば充実した生き方ができるからね。だから自分も女房も定期的に遺影を撮ってます。自覚した方がいいんですよ。少し前にうちの母親が「人生短い」ってぽろっと言ってね、それがものすごく堪えてねえ……。だからやっぱり、田舎ですけど頑張って発信しなきゃいけないって、そう思ってるんです。諦めちゃったらダメなんですよ。

かげやま写真スタジオ
鳥取県東伯郡琴浦町赤碕699(TEL. 0858-55-0555)