うちはフィルムとアナログの銀塩プリント(※注釈)にこだわってやっています。
一時は悩んだんですよ。去年も新しいデジタルプリントの機械を見に行って、もう入れようかな〜と思ったんですけど、目の前にしてやっぱり「いらん!」って(笑)。これは違うと思った。私、他のことは妥協できても、フィルムに関しては絶対嫌なものは嫌やから。もちろんうちにもデジカメプリントの機械は置いてますけどね、でも、そのために来るお客様って一言もしゃべらずにすーっとお店入ってきて黙々とやってるでしょう。それがフィルムやったら絶対に「どこ行ってきはったん?」とかしゃべったりできるんですよね。プリントした写真のなかで、気になる写真を一番上に重ねておいて、お客様が仕上がったプリントを取りに来られた時に「これですか?」って言いながら、「いやあ、これどこの写真ですか〜?」って上手いこと聞いたりね(笑)。

もちろん焼いているときには絶対写真の内容見ないんですよ。見るのはその写真の色ばっかりですね。うちは、ほとんど手焼きと一緒で、機械で焼くときに一枚一枚、全部補正して触ってるんです。触らない写真は、ほとんどないですね。なんぼ上手な人でも、ちょっと明るいな、暗いなっていうのありますから。

とはいえ、私はね、この仕事を始めて今年で23年になりますが、もともとはまったく知識がなかったんですよ。昔勤めてた会社でレクリエーションリーダーをやってて(笑)、YASHICAの古い一眼レフを買って会社の旅行とかで撮ってた程度だったんですよ。で、会社辞めて家にいた頃、ある日写真屋さんに行くと、うちも今飾ってるような、大きな写真があってね「あんなん撮りたいな〜」と思ってそこの社長に声かけたら「ここで1回働いてみいへんか?」って(笑)。その時、写真学校を出た入社志望の男の子がいたのに、その人蹴って何もわからへん私を入れてくれたんですよ。

それからは本当にその社長に鍛えられてね。お客様の目の前で頭叩かれたりして。でも社長が撮る写真がすごい素晴らしかったから、絶対私も! と思ってね。家に帰る度に「もう明日行かへん」って泣いてるけど、朝になったらケロッとして行くんですよ。前の会社ではしょっちゅう休んでたのに(笑)。だから、そこで根性ができたっていうかな。当時、お客様に「ここで我慢できたら、あんたは何処言っても我慢できるわ」って言われるほどでしたね。そんな厳しい会社やったんです。

でも結局そこは、13年勤めて退社して、その次は大阪の交野(かたの)っていうところにある、地域50数店舗中売上も店の大きさも一番最低の店で店長をやって。そこでは頑張って地域で最下位からトップになることができたんです。その後また他の店を経験したりして、平成14年からここで自分の店をもって、切り盛りさせてもらってます。私、本当にこの仕事好きやからね、ここに来てたらほっとするんですよ。

この間も七五三の予約入ったんですけどね、その方が「今デジタル流行ってるけど、やっぱり台紙に入れてきちんとしたやつにしたいから、よろしくお願いします」って言われて。あ、こういう人がいてくださるんだから、よかった! と思って(笑)。スタジオ写真撮影の値段もね、お客様から「安すぎるよ」って言われるけど、今までその値段で来てるのにいきなり上げれないでしょう。とにかく自分とこで出来る範囲のことは一生懸命やっていこうと思うんです。それにやっぱり、ほんとにお客様がね、いい方ばっかりで。だから辞めれないですねえ。お客様も「お店なくなったら困るからね」って言ってくださるから、「無くならんように、うちにフィルム出しに来てね」って言うんですけどね(笑)

※アナログの銀塩プリント…光に反応し黒化する性質を持つ塩化銀を素に画像を形成する。銀塩フィルムを通した光で直接銀塩印画紙にプリントする方式。プリントの補正が難しいがフィルムの持つ性能がそのままプリント品質に再現される。現在は、プリントの補正が簡単なデジタル方式の銀塩プリント(フィルムをスキャナーで読み取って画像をデジタイズし、それをレーザーで印画紙に露光する)方式が主流となっている。

フォトランド松井山手店
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