数々の絵本を出版し、最近ではNHK「おかあさんといっしょ」の工作指導を担当するなど、大活躍のイラストレーターtupera tuperaさんは、亀山達矢さんと中川敦子さんのご夫婦ユニット。昨年3月には長女の采里子(とりこ)ちゃんが生まれたという情報を聞いた編集部は、プロのイラストレーターさんのアルバムは、きっとすごいアルバムに違いない! と、お宅へ伺いました。

いざ、お宅拝見

tupera tuperaさんのアトリエ兼自宅があるのは、新宿から電車で約20分の西東京市、東伏見駅のすぐ近く。ちょうど家の前で娘の采里子ちゃんとtupera tuperaの一人、お父さんの亀山達矢さんが遊んでいたところだったので、一緒にお家へ。早速案内してもらった2階のアトリエはシンプルな空間ながら、天井にカラフルなモビールが吊るされていたり、鴨居のところにダンボールの人形が並んでいたりと、さすがのtupera tuperaワールド。しかもただ可愛いだけじゃなくてどこか可笑しかったり、毒があったりと妙に気になる子達ばかりで、二人の世界観が伝わってきます。いよいよ期待は膨らむばかり。ということで早速アルバムを見せていただくことに。

シンプルなアルバム

もう一人のtupera tuperaこと、中川敦子さんが「ほんとに、普通なんですよ〜」と持ってきてくれたのは、とてもシンプルな布張りのアルバム。形は真四角で、背の部分は10センチ程もの厚さがあり、まるで辞書のような風貌です。表紙のところには、これもまた真四角な窓があり写真や二人によるイラストがさりげなく覗いています。中を開くとポケットタイプの台紙で、写真の横には簡単なコメントを書くことが出来る欄が。「これは伊東屋さん(文具店)で見つけたんですが、すごく気に入っていて。このシンプルさがいいんです。あと、一冊にたくさん入るところもいい。意外とアルバムって一冊に入る枚数が少なくて。それだと、どんどん買っていかないと間に合わないでしょ」。

表紙に小さな箔押しのロゴ一つ見当たらない、シンプルな装丁のアルバムはアメリカのKOLOというメーカーのもので、結婚式から最近までの写真が収められた色違いが計5冊。「基本的にはデジカメが多いんですけど、采里子が生まれてからフィルムカメラに目覚めて」。そう言って達矢さんが取り出したのはニコンの一眼レフ、FM2。「これ、大学に入ったときに学校で買わされたもので、10年ぶりに出してきたんですよ。買った当時は、なんでこんな高いもの買わなきゃいけないんだ、って思ってすごくイヤで、友達にもお前は写真のセンスないって言われたり……でも最近は撮りたい対象が明確になって、そのセンスも開花した気がする(笑)」。その写真を見せてもらうと、確かに素敵な写真ばかり。親が我が子を撮った写真に宿る力、その強さを改めて実感します。

気負わず楽しく

「最近は携帯電話で撮った写真もプリントしていて、これなんかもそう」。敦子さんが指さしたのは、表紙にある真四角の窓から覗く采里子ちゃんの写真。「最近の携帯のカメラってすさまじく綺麗ですよ」「もしかして携帯がデジカメに近づいてきてるかもしれないね」。口々に話すお二人は、携帯電話でもデジカメでも気軽に撮った写真をプリントして、さくさくアルバムに収めていく。そして、ここぞという時にはフィルムカメラで写真をのこし、気が向けば写真の横にコメントも書くというスタンス。そうやって、きわめて自然なアルバムライフを楽しんでいるようです。

プロのイラストレーターさんがつくるアルバムということで、勝手に、ものすごく凝ったアルバムを想像していたわたしたち。けれど出てきたアルバムはとてもシンプルで、なんだか自分たちの無闇な想像が恥ずかしくなってくるほど。「よくいろんな人から子どもの服とかおもちゃとか、すごい可愛いのを手作りしてるんでしょ、なんて言われるんですけど全くそんなことない(笑)」と敦子さん。そして達矢さんも「普段家で仕事として絵を描いたり物を作ったりしてるから、それ以外では作る気にならなくて(笑)。もちろん依頼されたら期待以上のものを完成させる自信はありますけどね(笑)」。

そして「こういうのもあるんですけど」と見せてくれたのはMOLESKINのノート。それは、イラストと文章、たまに写真が加わった育児日記でした。「これも最初は張り切って書いてたんだけど、だんだん億劫になって(笑)。気付いたら三ヶ月ほどほったらかしにしたり……夫婦交代で書いてるんですけどついつい〝敦子、書いてよ〜〟って(笑)」「アルバムに入れてる写真のサイズもね、いつも当然のようにL判でプリントして入れてたけど、なんかスポスポ落ちてくるな〜って。やっとプリントサイズを間違えてたことに気付いたのが3冊目(笑)」と敦子さん。「でもね、とこ(采里子)ちゃんが大きくなったときに、それに気付いて笑ってくれたりしたら、それもまたいいなって」。肩の力を抜いて気負わず楽しむ。どうやら、これがアルバム作りの秘訣のようです。

tupera tupera(つぺらつぺら)
2002年より、イラストレーションや、小物、絵本作りなどで活動を始めた亀山達矢と中川敦子の夫婦によるユニット。近著に、『かおノート』(コクヨS&T)『どんなおと?』(教育画劇)『アニマルアルファベットサービス』(フレーベル館)がある。
http://www.k2.dion.ne.jp/~tupera/