撮った写真を紙に印刷して、1冊の写真集のようにまとめることができるフォトブック。データでのやり取りが中心になるため、手で1枚1枚貼って仕上げる従来のアルバムに比べるとなにか物足りない……そんな印象があるかもしれません。
しかし、そんなイメージも、きっとこのインタビューを読めば吹き飛ぶはず。昨年、俳優の高嶋政伸さんと結婚された女優の美元さん。彼女はその結婚式で、お父さんへの贈り物としてフォトブックを選びました。

─ なぜお父さんへの贈り物にフォトブックを選んだのですか?

結婚式での両親への記念品贈呈って、一般的には花束とか自分が生まれた時の重さのテディベアなんですけど、たぶん、うちの父親はお花もぬいぐるみも捨てちゃうなと思って(笑)。「一番贈りたいもの何かな?」って政伸さんと話していたとき、私は結婚するまでのアルバムを贈りたいと思ったんです。そんなときにフォトブックの存在を知って。

─ フォトブックを知ったきっかけを教えてください。

インターネットだったと思います。特に結婚する前は、とにかく毎日パソコンに向かっていて……例えばウエディングケーキを決めるときには、「そもそもウエディングケーキって何?」「なんでウエディングケーキは3段なの?」とかネットで調べたりしていたんですよね。何でも本物にしたくて。ルーツを知ると、守るべき伝統と現代風に変えてもいい所が見えてくるんです。それで、「結婚式のときになんで両親に記念品を贈るんだろう?」って。良く考えてみたら当然なのですが、感謝の気持ちを表わすものだったんです。それで、「今日まで育ててくれてありがとう」っていう想いを込めて、それぞれのフォトブックを作ってプレゼントしました。「これからは私たち2人で一つのアルバムを作っていきます」っていう意味も込めて。

─ 完成までにどのくらいかかりましたか?

1晩です。1晩って言っていいのか、夜からはじめて、気付いたらお昼の11時でした(笑)。私の母は私が幼い頃に他界したのですが、実家には生前、母が撮ってくれた、私の写真が入ったポケットアルバムや、私が生まれる前の母のアルバムが本当にたくさんあって。それらを全部見返して、気になった写真をカラーコピーしてノートに貼りつけながら構成を考えました。で、最初は写真だけを並べてたんですけど、そこへ文字を付け加えようと思った時、2、30年前の写真にコンピューターの文字がどうしてもしっくりこなかったんです。それで、コンセプトが「母親からの贈り物」だったこともあって、やっぱり母の文字で綴るのが一番いいなと思って。育児日記などから直筆の言葉を拾ってきて、それをコピーして切り貼りして作っていきました。文章を作りながら、「こういう単語、お母さん書いてるかなあ」って育児日記をめくると、必ず見つかって。何も考えずめくっていても不思議と目につく言葉があったりして。それを繋げていくうちに自分でも想像もしていなかった「天国からの手紙」ができました。本当にこれはフォトブックだからこそ出来たことだと思います。

─ その通りですね。

思い出のあるものをきちんと残した上で新しく編集し直せるって、やっぱりデジタルの力だなあって思います。私の父はタクシーの運転手をしているので、車の中で気軽に見られるアルバムがあればなあと、そう思ったときに本当にフォトブックはぴったりでした。

─ 大事なのは美元さんがこだわられたような、
  ルーツや根本にある思いですよね。
  それがあるからこそ、普通のアルバムも大切だし、
  それとは別にフォトブックという選択肢もある。

そうですね。昔のアルバムは大切であればあるほど、その辺にポンと置いてはおけないですよね。母の育児日記もなんだか勿体無くて普段は見れないし。政伸さんも、お父さんにそれこそ毎日見て欲しいって、お手洗いにでも置いておけるようにと一番小さいフォトブックをプレゼントしました。

─ なるほど。

生前、母は本当に写真を撮るのが大好きでした。正直、母が亡くなった当時、私も少し病気がちだったので、そんな自分は、病気で苦しんでいた母にとって負担なだけだったんじゃないだろうか? ってクヨクヨしちゃうこともあったんです。でも、その答えは母が撮ってくれた写真の中にありました。そこには自分でもびっくりするくらい無邪気な顔や楽しそうな顔をしている私が写っていた。その笑顔を見たときに、「ああ、お母さん、私のことを愛してたんだ」って。その瞬間、「愛しい」と思ってシャッターを押してくれてたんだと気付きました。自分の笑顔を通してレンズの向こうの母の顔が見えてきて、その思いがすごく伝わって。私がいたことが母の人生の喜びだったんだって程にまで思えて。そのとき、長い間不安に思ってたことがすべて解消されたんです。

それから、その後の人生も大きく変わったんですよ。自信に繋がったというか……。私、母の顔は今でも鮮明に覚えてるんですけど、母の声は、どんなに頑張っても思い出せない。それを録音したテープとか映像が残ってないからかなって思うと、もし写真がなかったら私は母の顔も覚えてないかもしれないんですよね。そう思うと写真の力ってすごいなあって。

─ 写真をのこしてくれたからこそ、ですよね。

はい。だから私も自分の子どもには1枚でも多く写真を残しておきたいなって。いつでも撮れるような日常の一瞬こそ、本当はかけがえの無い大切な瞬間だと思うんです。いつでも撮れるって安心していられるのは素晴らしいことなんですけど、一方で残念なことでもあって。だから最近はいつも、父との別れ際に必ず父の写真を撮るんです。「また?」って言われながら(笑)

─ お父さんはフォトブックを読んだとき、なんと言われていましたか?

「しばらく動けなかった」って。母が亡くなったとき、私でさえ自責の念があったほどだから、父なんてもっとその気持ちがあったと思うんですよね。「もっと出来ることがあったんじゃないか」って、いっぱい思ってきたと思うんです。だからこそ、そんな父のために、父の名前は栄次っていうんですが、「栄次さん、どうも有難う」っていう言葉をどうしても母の筆跡で形にしたくて。たくさんあった写真の中から唯一見つかった2人のツーショット写真と一緒にフォトブックに載せたんです。結婚式が終わったある日、私がふと父の写真をデジカメで撮ったとき、すごく自然な笑顔をしてくれて。
私の知っている父はとにかく写真に撮られることが苦手で、いつも同じ顔をしていたので、「今までで一番いい顔だよ」って言うと、そのとき初めて、これまで父自身が思ってきたことを話してくれました。「俺は今までずっと、カメラを向けられても自分が胸張ってそこにいていいのかわからなかったけど、フォトブックの中の『栄次さんどうも有難う』っていう言葉を読んで、肩の荷が下りた気がした。写真を撮られるのがすごく楽になった」って。それからは、今までは私がデジカメで写真を撮っても興味を示さなかったのに、「俺、今どんな顔したの?」ってカメラを覗き込んでくるようになったんです。だから、本当にフォトブックは結婚を機に思いがけず出来上がった宝物。政伸さんの方も、お母様がすごく感動されて、「すぐに増刷して!」って(笑)。それをすぐにできるのがフォトブックのいいところですよね。今ちょうど私の周りで結婚する友人が多いので、皆にフォトブックを贈るのを薦めています。「いろんな選択肢があって、じゃあどうする? っていう中に入れて欲しいな」っていつも話しているんです。


日本人の父と韓国人の母を持つ。2000年度『準ミスユニバースジャパン』受賞。女優、モデルの他ライター、ウォーキング講師、ハリウッドスターへのインタビュアー、チャリティーイベントのディレクターとしても活動中。
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