フィルムカメラという道具は過去のものではない。ただそれだけを言いたくて、今回の特集を組みました。僕自身、NATURAというフィルムカメラに出会ったことで人生が大きく変わりました。それは写真の業界に足を突っ込んで、あげくの果てに、こんな「写真のことば」なる冊子までつくってしまったというような、そんなことではなくて、もっともっと根源的な、データではなくカタチあるモノへの思いや接し方の話で、そのことは僕の考え方を変え、暮らしを変えました。それはかつて僕の生活がデジタルによって大きく変革されてしまったことからの、とても人間的な抵抗だったように思います。

実際、デジタル一眼で写真の面白さを知った若い人たちが、続々、中古フィルムカメラを購入しはじめているといいます。フィルムカメラのずっと先にあったはずのデジタルカメラ。さらにその先にあらわれたフィルムカメラとは、いったい何なのか? そのことについて考えてもらえるきっかけになればと思います。

藤本智士(本誌編集長)