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藤本   ここで質疑応答の時間に入らせていただこうかと思います。質問や意見などございます方、挙手願います。
     
お客さん1   クラシックカメラの修理業をしていてます。前々から考えていたんですが、日本の写真文化というのは未成熟だと思うんですね。その未熟さが日本の今の状況を表していると思うんです。ですので、ユーザーさんが写真を撮った後どうやって楽しんでいけばよいかについて、何かヒントになるようなコメントをいただければと思います。
     
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藤本   プリント後の写真の使い道をもっと写真屋さんとして提案出来ないかということですね。そのあたりを、じゃあミヤモトさんどうですか?
     
ミヤモト   うちの2階にあるギャラリーでは、全国のユーザーさんが撮られた写真のフォトブックを20冊くらいお預かりしてるんですね。それを1階で写真を出して待っていただいているお客さんに見ていただいたりしていて。他の人の写真を見る事が、新しい撮り方を見つけるきっかけになってるんじゃないかなと思っています。
     
大村   プリントした後、飾るっていうのは業界では何十年も前から推進してるんですけど、結局日本に根付いてないんですね。飾る人は飾る、飾らない人は飾らない。文化とかそういうレベルじゃない状態が続いている。僕がいまプリントでやっているのは、富士フイルムさんのフォトブックを焼くペーパーがあって、それはあまり指紋とかもつかず、ちょうどハガキサイズになるんですけど、その中にちょうど額縁に入ったような形で広い白縁つけて焼くんですよ。普通は裏にナンバーとかデータ情報が印字されるんですけど、印字もなしにすると、真っ白なんです。だから切手貼るとハガキとして出せちゃうんですよ。それを、お店に来るお客さんに提案しましたらかなり好評で。
     
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松岡   うちの店の場合は、私が最初にいたお店が全紙サイズでプリントすることが多かったからか、私自身、もう「写真は全紙がいい!」と思って最初から自分の写真を全紙サイズで焼いて店のギャラリースペースに飾ってるんです。そしたら、お客さんもそれを見て「やっぱり写真は全紙やな」って言ってくれますね。
     
藤本   大きく引き伸ばすってことですよね。僕も、勢井さんのところで、まさに大きくしてもらってますけど。
     
勢井   そうですね。お客さんで多いのは全紙とか半切とかね。あとは作品として撮ってためた分をお客さんが自分でファイルにしたりしてますね。
     
藤本   陰山さんも何かお客さんに提案されることとかありますか?
     
陰山   ええ。写真は伸ばしてこそ写真って結論になったんです。もうそれは間違いないことで、伸ばさないと意味がない。自分の子どもの写真伸ばして、理想は壁一面にあったら楽しいですけどね。生活の癒しというか活力になりますよね。
     
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藤本   写真を大きく伸ばすってなかなか考えないですもんね。今回お越しいただけなかったですが、冊子にも載っている米子にある植田カメラの植田亨さんのお話にあるように、フィルム現像をお願いするときにシートベタを出してもらって、それを見て気に入ったものを大きく焼いてもらうこと、これってなかなか一般の方には馴染がないけど、いいなあと思うんですよ。L版で同時プリントで出すと、どうしてもそこで完成されてるように感じますけど、本当はその先にそれをひとつの素材として、より大きく引き伸ばしてみるっていう楽しみがあるんですよね。
     
お客さん2   うちの隣の写真屋さんは、四つ切りサイズのプリントをお願いすると頼みもしないのに色調の違うのを2枚も3枚も出してくれて、好きなものを選ばせてくれるんですよ。こちらとしてはいつも申し訳ないなあという気があって、写真屋さんにとって、お客さんから頼まれるときに、こういうふうに言ってくれたらわかりやすいっていうのがあれば教えていただきたいです。
     
大村   お客さんがどういう写真を望んでいるかっていうのを店が把握するのは、そのお客さんと話ししてないと絶対無理なことですよね。うちの店では、どのような感じがいいですかってプリント見本を見せて選んでもらってやってます。あとはお客さんが堂々と写真屋さんに「これは駄目だ」とか「こういう風にしてほしい」とか、どんどん言っていただきたいっていうのはありますね。じゃないとわからない部分もこちらにあるので。
     
松岡   焼いてる方が写真をやってる方じゃないと無理です。写真はトリミングで変わりますからね。とにかく、まずカット、そして色調。
     
陰山   僕は、見本がいると思いますね。ネガの場合やっぱり焼く人の感性がありますんで、L版とかベタとか持って、これよりもやや濃くとか、赤くとか青くとか。見本がないとやっぱりすれ違うことありますからね。見本があって指定があれば、100点は無理かもしれませんが90点にはなると思うんです。
     
藤本   勢井さんはプロラボということで、よりシビアにその辺りを求められると思うのですが、どうですか?
     
勢井   やっぱり会話の中でどんな調子のプリントをあげたらいいのか、自然とわかってきますよね。だからやっぱりコミュニケーションが大事ってことかなあ。
     
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藤本   そうですね。写真屋さんもいろいろですから、お客さんとしてはなかなかコミュニケーション取りにくい人とかきっといらっしゃるでしょうから難しいところだとは思うんですけど、きっと何回かそういうやり取りをしていくしかないってことですかね。自分のプリンターに育てあげるぞって思いながら接していったらいいんじゃないかと思います。
     
ミヤモト   うちの場合は、最初に、どんなカメラを使ってるか、撮った中で思い入れのものはあるか、とか事細かく聞くのですごい時間かかるんです。色の話しが出ると、どんな写真家の方が好きですかって聞いたり。普通の店みたいな、カウンターでパッと出して「何時間後に出来上がります」っていうのに慣れてたらめんどくさく思われると思うんですが、実際、一度そのお話をされたお客さんがプリント取りにきたら、やっぱりびっくりしていただけるんですね。よりお客さんの理想のイメージに近づいているので。
     
藤本   それは具体的に問診票とかあるんですか?
     
ミヤモト   はい。小さいものですけどね。あと、うちも写真をやっている写真好きのスタッフがプリントを焼いているので「あ、このカメラやったらこうだな」とか、カメラとフィルムの相性とか、プリンター側も何となく認識出来てるので、そのメモを見ながら再度確認しながら焼くという感じです。100%こういうイメージでって来られる方は話して通じるとこあるんですけど、うちはなんとなく写真が好きで始めてられるお客さんが多いので、そういう方はおまかせにしていただいて、そのフィルムカメラの良さがでるような焼き方をこちらから提案させて頂いて、そのお客さんがどんな喜ぶ顔するだろうって思いながら楽しみにして、じらすように見せて、「わあ!」って反応をいただけたり。そこから「実はまだこんな面白いフィルムあるんですよ」とか、「こんな撮り方あるんですよ」ってお話させてもらっています。
     
藤本   なかなかそんな写真屋さんは近くにないですよねえ!……と、そろそろ時間がなくなってきまして、申し訳ないですが締めに入りたいと思います。最後に簡単にお一人づつ、言い残したことなどあればお願いします。
     
陰山   さっきも言いましたけど、残っていくということと、毎日楽しめるっていうことが写真のいいところなんで、生きてるうちに写真で楽しんでほしいです。
     
勢井   いつまで続くかわからないですけど、銀塩写真を守っていきたいと思います。
     
松岡   私も今の機械が壊れたら一緒に心中しようと思ってます(笑)。とにかく写真屋さんに行ったらコミュニケーション。しゃべってください。それと富士フイルムさん、フイルムという名前がついてますから絶対フィルムは残してください。
     
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大村   まず皆さんにお願いですが、自分の育った町、生まれた町に写真屋があるか見てください。もし住んでるところにあるんだったら遠くの写真屋さんに出すんじゃなくて、まずは、そこの店に出してください。そしてその人がどういう写真をやってくれるのか、話しをしてちゃんと通じるのか調べてみて、それでだめだったら遠くに出すということでも遅くないんじゃないかなと思います。まず自分が住んでいる町に写真屋を残すような方向でお願いしたいです。
     
ミヤモト   ユーザーさんは、どんどん要望を写真屋さんに突きつけて、もしそこの写真屋さんが嫌な顔をしたらそこのお店にはもう行かなくていいです。やっぱり会話を楽しみ、コミュニケーションを大事にされるところに自分の大切な写真をまかせた方がいいと思います。そして写真屋さん、メーカーさんは、そういう話しがきた時に、逃げずにちゃんと立ち向かって欲しいですね。あと、何年もやられている写真屋さんって、実は若いユーザーさんとか、これから写真始める方とかが知りたい情報を、既にたくさん持ってられると思うので、それをどんどん出して、写真が楽しいんだっていう方向に導いていただけたらなと思います。
     
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藤本   では平間さん、ご自身がやられる新しい写真屋さんの姿について何か見えてきたものがあれば。
     
平間   そうですね。出来たら夏くらいまでに浅草あたりに写真屋さんを出そうかなと思ってるんですよ。今回お話聞いていて、やっぱり人と人とのコミュニケーションがチェーン店化していくことで全くなくなってしまって、それはやってる側にもお客さんにも両方にとって悲劇だった。なので原点に戻ってちゃんとそういう場を作っていきたいですね。
     
藤本   皆さんありがとうございました。今日は短い時間の中で明るい写真屋さんの未来を探るっていう超難問にチャレンジしてみましたが、どうだったでしょうか。なかなか一回で解決出来る問題ではないと思うんですが、こういう機会をもつことは大事やなと改めて思っています。また今後もこういうイベントが開催できたら、そして僕も平間さんも新しい写真屋さんを始めることができたらいいなあと思っていますので、今後も写真屋さんを取り巻く動きにご注目いただければと思います。今日は長時間に渡ってどうもありがとうございました。

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